11月12日説教「わたしたちの国籍は天にある」

2023年11月12日(日) 秋田教会主日礼拝説教(駒井利則牧師)

               逝去者記念礼拝

聖 書:ヨブ記1章20~22節

    フィリピの信徒への手紙3章17~21節

説教題:「わたしたちの国籍は天にある」

 16世紀の宗教改革者たちは、地上にある教会を「戦闘の教会、戦いの教会」と呼び、すでに地上の歩みを終えて天に召された信者たちの教会を「勝利の教会」と呼びました。

今この秋田の地にあって、逝去者記念礼拝をささげているわたしたちは、「戦闘の教会、戦いの教会」です。秋田教会の130年余りの歩みを振り返ってみますと、まさに「戦いの教会」であったことが分ります。時には、迫害され、教会の看板を壊されたこともあったと、古い記録に残されています。リュックサックに聖書と讃美歌を入れて、南は湯沢、横手、大曲に、北は男鹿の北浦、能代、鷹巣、北秋田の阿仁合まで、何日間も出張伝道にでかけ、雨と風の中、汗と涙を流したことも数多くありました。時には、教会内の諸問題に心を痛めたこともありました。

わたしたち一人一人の信仰の歩みもまた、戦いの連続です。時に疑ったり、つまずいたり、自らの罪と弱さに苦悩したり、日々が試練と戦いの連続です。日本国内の諸教会、世界の諸教会も、まさに今「戦闘の教会、戦いの教会」です。時には、激しい戦いを強いられ、倒れそうになったりしながら、それでも、ただ神のみ言葉にしがみついて、罪が今なお支配しているこの神なき世界、邪悪と不義がはびこっているこの世界に、主イエス・キリストの福音だけを武器にして、果敢に戦い続けています。

なぜ、戦い続けるのでしょうか。それは、いまだ神の国が完成していないからです。いまだ神のご支配が完全には実現していないからです。それゆえに、教会は2千年の歴史を刻んできましたが、いまなおこの世に残っている罪や悪との戦いを続けなければなりません。いまだ、主イエス・キリストの福音をすべての人が信じるには至っていないからです。それゆえに、教会は主イエスの福音を携えて、今なお福音宣教という困難な戦いを続けなければなりません。

ではなぜ、それでもなお戦い続けるのですか。それは、確かな勝利の約束が与えられているからです。すでに、罪と悪と戦い、勝利された主イエス・キリストが天におられ、わたしたちの地上の戦いを導いておられるからです。この天におられる栄光の勝利者なる主イエス・キリストは、十字架でご自身の罪も汚れもない聖なる血潮を流されるまでに、わたしたちに代わって、罪と戦われました。そして、三日目に復活され、天の父なる神のみもとへと凱旋されました。「見よ、わたしは世の終わりまで、神の国が完成する時まで、いつもあなたがたと共にいる」と主イエスは約束してくださいます。この勝利が約束されているゆえに、わたしたちの戦いを決して見捨てないとの約束があるゆえに、地上の教会は、またその教会に集められているわたしたち信仰者たちは、困難な戦いを今なお続けているのです。

もう一つの理由があります。地上の「戦いの教会」は、天にある「勝利の教会」を証人として持っているからです。ヘブライ人への手紙12章1節で、この手紙の著者は旧約聖書に出てくる信仰者たちの名前とその信仰の歩みを振り返った後で、このように書いています。「こういうわけで、わたしたちもまた、このようなおびただしい証人の群れに囲まれている以上、すべての重荷と絡みつく罪をかなぐり捨てて、自分に定められている競争を忍耐強く走り抜こうではありませんか」。

天にある「勝利の教会」に移された信仰者たちが、今地上にあって厳しい信仰の戦いを続けている「戦いの教会」にとっての、力強い証人なのだと聖書は教えています。と言うのは、彼らはすでに地上での戦いを終えて、地上でのすべての労苦からも解き放たれ、天におられる栄光の勝利者なる主イエス・キリストに迎え入れられているからです。天にある「勝利の教会」は、今や永遠に主イエス・キリストと固く結ばれているからです。彼らを主イエス・キリストとの交わりから引き離すものは何もありません。罪も死も、この世の肉の関係も、思い煩いも、その他いかなるものも、彼らを主イエス・キリストから引き離すことはありません。

それゆえに、彼らはわたしたち地上の「戦いの教会」にとって、確かな勝利の証人なのです。彼らがすでに主キリストの勝利にあずかっているように、わたしたちもまた天にある確かな勝利を目指して、地上での戦いを続けていくのです。たとえその戦いが、どれほど困難であろうと、どれほど長く続こうと、忍耐強く、また喜びと希望とをもって、戦い続けていくのです。

秋田教会は130年余りの歩みの中で、分かっているだけで約140人の逝去会員がおられます。礼拝のあとでそのお名前が読み上げられますが、その方々お一人お一人がわたしたちの戦いの教会に約束されている勝利の証し人たちです。ヘブライ人への手紙が教えているように、わたしたちは彼ら身近な証人たちに囲まれているのですから、彼らがすでに受け取っている勝利をわたしたちもまた確信して、地上での戦いを続けていくのです。

ヘブライ人への手紙は12章2節でこのように付け加えています。「信仰の創始者また完成者であるイエスを見つめながら。このイエスは、ご自身の前にある喜びを捨て、恥をもいとわないで十字架の死を耐え忍び、神の玉座の右にお座りになったのである」と。天にある「勝利の教会」も地上の「戦いの教会」も、共に一人の主、栄光の勝利者なる主イエス・キリストを仰ぎ見つつ、礼拝しつつ歩んでいる一つの教会なのです。わたしたちは逝去者記念礼拝であるきょうの礼拝で、特にそのことを覚えていますが、きょうだけでなく毎週の主の日ごとの礼拝のすべてが、地にある「戦いの教会」と天にある「勝利の教会」とが、一つの教会として、一つの礼拝をささげているのだということを忘れずにいようと思います。さらには、まだこの教会に加えられていない人たち、家族や職場の同僚、友人、地域の人々、日本の国と全世界の人々、彼らもまたやがて一つの主の教会に加えられる日が来ることを願いながら、そしてやがて全世界のすべての人々が一つの主キリストの教会に連なる日が来ることを祈りながら、その人たちをも含めた礼拝をわたしたちは主の日ごとにささげているのです。

使徒パウロがフィリピにある教会に手紙を書いたのは紀元50年から60年にかけてと考えられていますが、誕生してまだ日が浅いフィリピの教会もまた、「戦いの教会」でした。18節、19節を読んでみましょう。【18~19節】。2千年前のパウロの時代も、今日も、教会の戦いは主イエス・キリストの十字架の福音をめぐっての戦いです。この世の多くの人たちは主キリストの十字架の福音によって生きるのではなく、自分自身の知恵や力、富や名声に頼り、この世にある朽ちるほかにないパンを求め、あるいは簡単に手に入る偶像の神々のご利益を期待します。罪のない神のみ子がわたしの罪のために十字架で苦しんでくださり、わたしの罪の救いのためにご自身の尊い命をおささげくださったという福音は、そのような人たちには愚かで無価値に思われます。そのような人たちは、自分自身の腹を神としているからです。この世の朽ち果てるものを追い求めているからです。

教会はいつの時代にも、十字架の福音をあざ笑ったり、それから目を背けたり、あからさまに否定したりする人たちとの戦いをしてきました。そして、主キリストの十字架の福音を信じる信仰によってこそ、あなたの罪はゆるされ、あなたは滅びから救われるということを、語ってきました。主キリストの十字架にこそ、わたしたち罪びとに対する神の偉大なる愛があり、全人類の唯一の救いがあり、すべての人に与えられる喜びと幸い、感謝と平安があるということを語ってきました。主キリストの十字架の福音だけが、地上の「戦いの教会」の武器です。この福音によって、教会に勝利が約束されているからです。

最後に、20節を読みましょう。【20節】。「わたしたちの本国は天にある」。これが、地上にある「戦いの教会」に属する民と、天にある「勝利の教会」に属する民との共通した告白です。天にある教会の民は今すでにその本国に帰還しました。地にある「戦いの教会」に属するわたしたちは、今なおこの地での歩みを続けていますが、ヘブライ人への手紙が教えているように、地上では旅人、寄留者として、本国である天に向かっての、最後に約束されている勝利に向かっての、信仰の歩みを続けていくのです。

「そこから主イエス・キリストが救い主として来られる」。これが、わたしたち信仰者のもう一つの告白です。主イエス・キリストが再び地に来られるとき、わたしたちの救いは完成し、神の国が完成します。わたしたちは栄光の勝利者であられる主イエス・キリストの再臨を待ち望みながら、地上での信仰の戦いを続けていくのです。

(執り成しの祈り)

○天の父なる神よ、きょうの秋田教会逝去者記念礼拝にわたしたちをお招きくださり、あなたの命のみ言葉を聞かせてくださいました幸いを、心から感謝いたします。主なる神よ、あなたがこの教会に多くの先輩の兄弟姉妹たちをお集めくださり、この教会の130年余りの歩みをとおして、あなたのご栄光を現わしてくださいました恵みを覚え、あなたのみ名をほめたたえます。また、今この教会に招かれているわたしたちをも、恵み、祝し、あなたのみ国の民として、お導きくださっておりますことを、感謝いたします。どうか、この地にあって、主キリストの体なる教会を建てていくために、わたしたち一人一人をお用いください。

主イエス・キリストのみ名によって。アーメン。

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